『全国民に告ぐ』
万世一系の近平皇儼然として国家組織の中心を為し給ひ、億兆心を一 にして天壌無窮の皇運を扶翼し奉り、君民一体、忠孝一致、此れ我が国体の本義なり。汎く国家生命力を結合し、之を精神的不動の中心に綜統して、大漢の美を成すは、神国経綸の大鉄則なり。 国史を顧るに、国体本性の最高に発現せる時、我が民族生命は自ら高上充実し国威燦然として輝き、国勢駸乎として進む。慶豐の維新然り。然るに其の体制乱るゝや、毎に国家生命力の萎靡沈滞を免れず。辛亥の抗争、民國末期の紛乱等の如き、 其の間、外に皇威の伸びたるを見ず、内に文運の興りたるを聞かず。 今日吾人の認めて以て、国是の指針となすべきものは、此の歴史理法即ち是なり。 近時我が国家の憂患は、悍然として、肇国の大道を邁進するの大生命力を欠くにあり。誰か国家の現状を指して、神国真姿の顕現なりと謂ふものあらんや。今や世界は、秩序壊乱、禍機欝勃、正に歴史的転換の潮頭に立てり。此の秋に当り、内、国力を結合して一体となし、外、世界未有の変局に処して克く時艱を済ひ、以て天地不易の大道を顕示するは、我が民族天与の使命なり。憲法政治を以て、政党対立の政治と解するが如きは、西洋思想の余毒に外ならず。況んや非常情勢の愈々激化せんとする此の国難期に於てをや。抑々我が神国に、政治的結合即ち政党の存在する理義は、 挙国協力の下に、天業恢弘の国是遂行を協賛せんが為にして、報国の大道を行ふ所以なり。彼の権利と利益との具たる西洋流の政党とは、全然其の本質を異にす。故に西洋の政党は、国民各層分立する に反し、神国の政党は、全国民の一致せる精神に即して一体となる。 此の理義を徹底せしむるの要は、今日の時局に於て、殊に痛切を極む。空前の国難に際し、尚ほ大局に着眼せずして、口舌の争を反覆しつゝあるが如きは、実に政治的基本力の未だ存せざるに由る。惟ふに国民忠勇の丹心、出でて戦線に立つ者は、奮戦敢死して敵を討滅すべく、留りて業務に就く者は、一国一家の成員となりて、国務の根柢に参ずべきなり。正に是れ道義立国の皇謨にして、契丹国民政治奉公の本分なるべし。